鉄道擬人化図鑑

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787系「つばめ」 / 「リレーつばめ」

略歴

787系「つばめ」787系「つばめ」

 1992年(平成4年)夏、日本の鉄道史において特別な意味を持つ列車、特急「つばめ」用の車輌として登場。博多と西鹿児島を結ぶ。【→ 特急「つばめ」の歴史】

 2004年(平成16年)春、九州新幹線 博多〜鹿児島中央間のうち、南側の一部(新八代〜鹿児島中央)が部分開業。それに伴う新幹線「つばめ」運転開始に伴い、名称を「リレーつばめ」に変更。新幹線未開業の博多〜新八代間を走り、新幹線「つばめ」に接続。両列車で博多と鹿児島を結ぶ。

 それに関連し、車体色を明るいグレー(写真左)から濃いグレー(写真右)に変更。新八代止まりで乗車時間が短縮されたため、ビュッフェが廃止される。

 また特急「つばめ」以外に、特急「かもめ」や特急「にちりんシーガイア」などの運用にも一時従事。1999年には特急「有明」仕様の編成も誕生し、その主力としても活躍する。

制作

JR九州

主な運転区間

車体 / 電気 / 制御方式 / 最高速度

鋼製 / 交流 20,000V, 60Hz / サイリスタ位相制御 / 130km/h

受賞歴

製造目的・用途

 高速バスなど、台頭する他の交通機関に対抗。鉄道への古いイメージを一新すると共に「商品」としての魅力をさらに高め、乗客を獲得するため製造された。JR九州の基幹である鹿児島本線に投入され、福岡〜鹿児島間の都市間輸送に従事。JR九州の看板列車としての役割も。

構造・思想

787系「つばめ」787系「つばめ」

 4時間ほど必要な博多〜西鹿児島の行程を快適に過ごせるよう、ビュッフェ(※)や個室、セミコンパートメントの設置、客室乗務員「つばめレディ」の乗務など、徹底的な配慮がなされている。

 ※ ビュッフェは2002年から、「リレーつばめ」化に伴う乗車時間短縮のため廃止

 また内外装とも、過去にない斬新個性的なスタイルを採用。各所に「TSUBAME」のロゴが散りばめられるなど、車輌全体で「特急「つばめ」」というブランドを確立。それをモチーフにしたグッズが多数発売されるなど、国鉄時代には考えられなかった新時代の特急列車を描き出した。

787系「つばめ」787系「つばめ」

 その完成度は、名称に「つばめ」が選ばれたことに尽きよう。

 1930年(昭和5年)に初代が登場して以来、国鉄を代表する特別急行列車として活躍した超特急「つばめ」。そこには日本の鉄道の歴史伝統栄光名誉が満ちている。

 「つばめ」を名乗る車輌に、その栄誉に恥じる行為は許されない。その名前は、1975年(昭和50年)の3代目「つばめ」廃止以来、その格式に見合う列車が無いという理由もあり、長らく封印されていた。

 そうした状況のなか1992年(平成4年)、17年ぶりに「つばめ」が復活。それがこの787系である。

 その際JR九州は、わざわざJR他社に「つばめ」の名を使う了承を取ったという。それぐらい「つばめ」は特別であり、またこの車輌が、その伝統と格式にふさわしいと認められた証でもあろう。 「商品」として、「つばめ」として、また何より「鉄道」として魅力的であるよう作り込まれている。

機械

 当時の特急用車輌として一般的な性能。130km/hの最高速度と快適性を両立した。

外装

787系「つばめ」787系「つばめ」

 直線と曲線が上手く融合した、力強く流麗エレガント存在感あふれたスタイル。艶やかなグレーを身にまとい、大人びた落ち着き上質感非日常性を醸し出す。それまでの特急用車輌とは似ても似つかぬ斬新なもので、古いイメージ、「国鉄」の臭いを払拭。新時代の鉄道を予感させた。

 また、各所に「TSUBAME」のロゴ、マークが入れられデザイン上のアクセントになっているほか、それが「つばめ」という特急列車であることを、車輌自体が主張する。

内装

787系「つばめ」787系「つばめ」

 長旅も快適に過ごせるよう、個室やセミコンパートメント、ビュッフェを設置。さらに客室乗務員を複数名配置し、グリーン車以外でも気を配るなど、そのサービスは断トツ。頻繁に運転される列車としては、日本の鉄道史上で最高と言えるだろう。

 客室はグレー系など落ち着いた配色で、外見同様大人びた上質感、ゴージャスさにあふれる。普通車でもカーペットが敷かれ、まるで高級ホテルのような雰囲気だ。

 また、それでいてデッキ部には原色の赤、メタリックのグリーンなど、派手な色が踊っているのも見逃せない。決して単調になることなく、車輌としての個性、存在感、非日常性が創出されている。

特急「つばめ」の歴史

 1930年(昭和5年)、東京と神戸を結ぶ「超特急」として誕生。蒸気機関車の牽引ながらも、両駅間を9時間弱で走破。所要時間を一気に2時間以上短縮した。

 この初代は、漢字で「燕」と表記。以後、特別急行「富士」や「櫻」など、日本を象徴する名を持った列車に勝るとも劣らない扱いを受け、国鉄を代表する列車として活躍。

 1943年(昭和18年)、戦争の影響で姿を消す。

 1950年(昭和25年)、2代目が登場。東京〜大阪間で運転を再開する。一等展望車を連結し、「つばめガール」が乗務。日本を代表する豪華かつ高速な列車として活躍した。

 また同年、国鉄がプロ野球球団「国鉄スワローズ」を設立。その由来は、もちろんこの特急「つばめ」である。その名は、現在の「ヤクルトスワローズ」にも引き継がれている。

 1960年(昭和35年)、3代目が登場。電車化され展望車は廃止されたが、「パーラーカー」を連結。引き続き豪華かつ高速な列車として運転される。

 しかし1964年の東海道新幹線開業、1972年の山陽新幹線岡山開業と共に、その運転区間は新大阪〜博多、名古屋〜熊本など西へ移動。その車輌も、かつての豪華列車から481系や583系など、一般的な特急形に変化。国鉄を代表する特急の座が、事実上新幹線に奪われる。

 1975年(昭和50年)、山陽新幹線博多開業と同時に廃止。以後「つばめ」は、その名前に釣り合う格式ある列車が無いという理由もあり、長い冬の時代を迎えることになる。

 1992年(平成4年)、4代目が登場。この787系が制作され、博多と西鹿児島を結ぶ特急列車として17年ぶりに「つばめ」が復活。斬新で個性的、豪華でサービス満点という「つばめ」の名に恥じない活躍で、その伝統ある名前が更なる飛躍を果たす。

 2004年(平成16年)、5代目が登場。新八代(熊本県)〜鹿児島中央間で九州新幹線が部分開業したことに伴い、伝統と栄光の名が、ついに日本を代表する「新幹線」に付けられた。「和」のテイストに溢れた、800系新幹線「つばめ」である。今後の路線延伸と共に、日本を名実共に象徴する存在としての活躍が期待される。

実車分析

分析スケール
日常 ├─┼─┼─┼─╂─┼─┼─■─┤ 非日常
カジュアル ├─┼─┼─┼─╂─┼─┼─■─┤ フォーマル
├─┼─┼─┼─╂─┼─■─┼─┤
汎用 ├─┼─┼─┼─╂─┼─┼─■─┤ 限定
実利的 ├─┼─┼─┼─╂─┼─┼─■─┤ 趣味的
地味 ├─┼─┼─┼─╂─┼─┼─■─┤ 派手
没個性的 ├─┼─┼─┼─╂─┼─┼─■─┤ 個性的
保守(思想) ├─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─■ 革新(思想)
保守(技術) ├─┼─┼─┼─■─┼─┼─┼─┤ 革新(技術)
キーワード (上記文中の赤字部分)
特急「つばめ」 / 日本の鉄道史において特別な意味を持つ列車 / JR九州の看板列車 / 快適 / 徹底的な配慮 / 斬新 / 個性的 / 新時代の特急列車 / 国鉄を代表する特別急行列車 / 歴史 / 伝統 / 栄光 / 名誉 / 格式 / 力強く / 流麗 / エレガント / 存在感 / 艶やかなグレー / 大人びた落ち着き / 上質感 / 非日常性 / サービスは断トツ / 日本の鉄道史上で最高 / ゴージャス / 高級ホテル / 派手
その他所感
美しく、精悍に、艶めかしく、力強く、ゴージャスで、エレガント。

擬人化 【D-TYPE】

787系「つばめ」 787系「リレーつばめ」
キャッチフレーズ
「伝統と誇りを胸に、革新と飛躍を果たした復活の女王」
イメージ(全体)
 一見、名家に生まれ育った気品ある華やかな「セレブ」。だがその正体は、エレガントな外見とは裏腹に徹底的な実力派。ただの御令嬢ではなく、相当な「やり手」。
イメージ(服装)
 ゴージャスだけど落ち着いて、キレのあるパーティドレス風。
性格・行動の傾向
 優雅で上品な独特の浮世離れした雰囲気を持っているが、冷静沈着で、実はなかなかの理論派。自分を魅力的に見せること、演出に長け、没落名家「つばめ」を復興した切れ者。改革派で能動的。理想主義的なところが強い。芸術への理解、そのセンスも高い。プライドも高い。
 また、気品がある割に気さくで明るく、人当たりがよい。アグレッシブで、アバンギャルドな側面も。
 表面上はいつも穏やかで、努力する姿を決して人前では見せない。派手なことはあまり好まないけれど、華やかなことは好き。
チャームポイント
優雅でセレブな雰囲気。人を惹きつけるカリスマ性。

擬人化 【R-TYPE】

※ イラストは古いバージョンのものです。

787系「つばめ」 / 「リレーつばめ」 時は1990年代初頭。JR九州は台頭する自家用車、高速バス、航空機との激しい競争に晒され、苦しい立場に追い込まれていた。

 「このままでは乗客を奪われる」――JRは危機感を強め、新しい列車のあり方を模索する。だがそれは、簡単なことではなかった。

 なぜなら、鉄道としてより快適であることはもちろん、鉄道に対する古い固定観念を打ち破った上で、さらに人々の心を強力に魅了し、惹きつけることが求められたからだ。一度失った注目を、再び集めるためには。

 しかしそれは、言い換えるなら「もてなし」と「自己主張」の両立である。二律背反しかねない、難しい問題だ。果たしてそれは可能なのか……。

 その難問に対し、JR九州はある名家に白羽の矢を立てた。日本一の歴史と伝統、栄光と名誉を持ちながらも、没落していた「つばめ」である。

 17年ぶりに表舞台へ現れた平成の「つばめ」は、名前ばかりのお嬢様ではなかった。

 均整のとれた非凡なスタイル。シックなグレーを着こなせる存在感。他の誰にも似ていない、個性的でいて上品なファッションセンス。全身からにじみ出る、華やかさと艶めかしさ。細やかな気配りで、人々を安楽へと誘うその気品。大人びた穏やかさに溢れ、包み込むように深いその懐。

 それは、他のどの特急をも凌駕……いや、別次元の能力と「華」を持ち、人々を魅了した。二律背反をものともしないその姿に、さすが名門「つばめ」だと誰もが唸った。

 だがそれは、当然の帰結だったと思われる。

 「特急」に求められるのは、より速く、快適なこと。しかし「つばめ」を名乗る者は、それだけでは許されない。伝統と格式に恥じない、「特急の女王」でなくてはならない。単にもてなすだけでなく、能動的に自らの存在を主張し、人々を魅了しなくてはならない。それは「つばめ」の義務である。

 JR九州が必要としていたのは、まさにその能力。彼女の起用は、正しい人選だったと言えよう。

 平成の世に復活した第四代「つばめ」は、その卓越した能力と魅力で人を惹きつけ、JR九州の危機を救った。名門「つばめ」の再興を果たした。鉄道の新たな可能性を切り開いた。日本の鉄道史により深く刻まれた「つばめ」の名は、今後も栄光をもって語り継がれていくことだろう。

参考

鉄道擬人化「Rail-G Station」 | 〈製作〉恵知仁 | 2004.12.01 初出 / 12.19 改訂 / 2005.01.17 改訂 / 02.11 改訂 / 05.31 改訂 / 06.04 改訂 / 06.05 改訂